天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

自覚症状がなければすぐに手術しなくてもいい


 先天性の心房中隔欠損症で、医師から手術を勧められています。現在、目立った自覚症状もなく、日常生活にも支障を来しておりません。正直、手術に対する不安があります。それでも、手術を受けるべきでしょうか。(62歳・男性)


 心臓は、右心房と左心房、右心室と左心室という4つの部屋に分かれていて、それぞれが太い血管とつながっています。心房は体内から戻ってきた血液を受け取り、心室は体中に血液を送り込む働きをしています。それぞれの部屋の血液が混ざり合ってしまわないように左右の心房の間には心房中隔、左右の心室の間には心室中隔という仕切りがついています。

 心房中隔欠損症は、この左右の心房の仕切りに穴が開いてしまっている病気です。機能をカバーするために心臓が肥大したり、肺への血流量が増えて風邪などの体調不良を起こしやすくなります。また、不調をきっかけにして心房細動が起こるケースもあります。仕切りに穴が開いているため、血管内にできた血栓があちこちに飛びやすくなり、脳梗塞にも注意する必要があります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。