重症になると、息切れ、動悸、疲労、不整脈といった自覚症状が表れますが、そうした自覚症状がなく、日常生活に支障を来していない状態なら、すぐに手術する必要はありません。
先日、心房中隔欠損症だった15歳の男子高校生の手術をしました。彼は血液の逆流量が多く、「長距離走はどう?」と聞いたら、「かなりつらい」と口にしていました。実際、レントゲンを見ると心臓が肥大していたうえ、いまなら小さく切開するだけで手術ができる状態だったこともあって、手術になりました。
手術は、穴が開いている箇所を直接縫いつけるか、ゴアテックス製のパッチを当てます。人工心肺を使用しますが、それほど難易度の高い手術ではありません。ただ、詳しい検査結果にもよりますが、60代でこれといった自覚症状が出ていないなら、おそらく私は手術しないでしょう。
そもそも心臓病は、冠動脈疾患と大動脈瘤以外なら、自覚症状がなければすぐに手術する必要はありません。冠動脈疾患は、糖尿病などによる無症候性心筋虚血で突然死する可能性がありますし、動脈瘤は大きさが6センチあれば、自覚症状がなくてもいつ破裂してもおかしくない状態です。それ以外の心臓病であれば、ゆったり構えていても問題ないケースが多いといえます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」