天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

自覚症状がなければすぐに手術しなくてもいい

 重症になると、息切れ、動悸、疲労、不整脈といった自覚症状が表れますが、そうした自覚症状がなく、日常生活に支障を来していない状態なら、すぐに手術する必要はありません。

 先日、心房中隔欠損症だった15歳の男子高校生の手術をしました。彼は血液の逆流量が多く、「長距離走はどう?」と聞いたら、「かなりつらい」と口にしていました。実際、レントゲンを見ると心臓が肥大していたうえ、いまなら小さく切開するだけで手術ができる状態だったこともあって、手術になりました。

 手術は、穴が開いている箇所を直接縫いつけるか、ゴアテックス製のパッチを当てます。人工心肺を使用しますが、それほど難易度の高い手術ではありません。ただ、詳しい検査結果にもよりますが、60代でこれといった自覚症状が出ていないなら、おそらく私は手術しないでしょう。

 そもそも心臓病は、冠動脈疾患と大動脈瘤以外なら、自覚症状がなければすぐに手術する必要はありません。冠動脈疾患は、糖尿病などによる無症候性心筋虚血で突然死する可能性がありますし、動脈瘤は大きさが6センチあれば、自覚症状がなくてもいつ破裂してもおかしくない状態です。それ以外の心臓病であれば、ゆったり構えていても問題ないケースが多いといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。