天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

いきなりペースメーカーを勧める病院は疑わしい


 心房細動と診断され、ペースメーカーの埋め込み手術を勧められています。他の治療法はないのでしょうか?(70歳・男性)


 不整脈の中でも多くみられる心房細動は、心臓が細かく不規則に収縮を繰り返し、動悸や息切れなどの症状が出る病気です。長期間続くと心機能低下に伴って心臓内で血栓ができやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こすこともあるので、放置することは勧められません。

 ただ、他に心臓病がなければ、脳梗塞予防以外の点ではそれほど心配する必要はないので、まずは血栓ができないようにする抗凝固薬や、心房細動や脈拍数を抑える抗不整脈薬を飲む投薬治療が行われます。

 その他、太ももなどからカテーテルを挿入し、不整脈の原因となっている部分に高周波の電流を流して焼き切るカテーテルアブレーション(カテーテル焼灼術)という治療法があり、段階を踏んだ丁寧な治療が必要です。そうした手順を踏まず、いきなりペースメーカーを埋め込む手術を勧める病院は、少し疑ってみた方がいいかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。