天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

いきなりペースメーカーを勧める病院は疑わしい

 ペースメーカーというのは、脈が遅くなったときに作動して心筋に電気刺激を伝え、心臓を正常に収縮させる装置です。もともと脈拍が遅い体質だったり、失神発作を起こして運び込まれたといった患者さんの場合は、いきなり埋め込むケースもありますが、一般的には、まず薬物治療を行ったり、携帯用の心電計を使って24時間心電図を記録し、拍動の異常を調べるホルター心電図検査を行った後に検討される“最後の手段”といえます。

 それなのに、いきなりペースメーカーの埋め込み手術を勧める病院も、残念ながら存在します。ペースメーカーの埋め込み手術は、一般的に約200万円ほど費用がかかります。健康保険が適用されるうえ、高額療養費制度を利用すれば、患者さんの自己負担は10万円程度で済みますが、病院側にとっては“儲かる治療”といえます。

 そのため、患者さんにペースメーカー埋め込み手術を受けさせようとするのです。中には、〈ペースメーカーを埋め込めば心臓機能障害1級と認定されて、さまざまな公的補助が受けられる〉などと、患者さんを誘導するところも見受けられます。

2 / 3 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。