天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

不整脈の治療は「生活の質」が落ちたと感じてから


 健康診断で、不整脈を指摘されました。まだ自覚症状はありませんが、すぐに治療を受けたほうがいいのでしょうか。(60歳・男性)


 心臓は心筋に電気が流れることによって興奮し、リズミカルに収縮を繰り返しています。この心拍動の規則性が乱れるのが不整脈です。心臓の収縮回数が多くて異常に速い「頻脈」や、逆に脈が少なく遅い「徐脈」、規則正しい脈拍の中にひとつ早く収縮が起こる「期外収縮」といったタイプがあります。

 不整脈は気にしなくても問題ないケースが多く、むやみに怖がる必要はありません。ただ、中には放置しておくと危険なタイプもあります。日常生活の中で、動悸、息切れ、力が入らないといった自覚症状を感じたら、循環器内科を受診し、危険な不整脈の兆候なのかどうか、治療が必要な状態なのかどうかを調べてもらってください。

 最も危ない不整脈といわれているのが心室細動です。心室と呼ばれる心臓の下の部分から不整脈が発生する病気で、心臓突然死の70~80%は心室細動が原因とみられています。先天性の遺伝子異常が原因の場合もありますが、心臓に異常がない健康な人でも、脱水、栄養障害、腎臓障害などが引き金になるケースもあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。