天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

不整脈の治療は「生活の質」が落ちたと感じてから

 ただ、心室細動で突然死した人は、倒れる前に急に脈が速くなったり、一瞬強く打ったり止まったりするような期外収縮や、激しい動悸などの自覚症状があった人も多いといわれています。日常生活の中で、そうした自覚症状を感じたら、きちんと受診しておいたほうがいいでしょう。

 近年、増えてきている心房細動にも注意が必要です。心臓の上の部分にある心房の収縮が極端に速くなる病気で、心臓が細かく不規則に1分間に250回以上も収縮を繰り返します。心房細動が長期間続くと心臓内で血栓ができやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を引き起こすケースがあるのです。

 いちばん厄介なのが、心臓の働きが落ちて低左心機能という状態になってから起こる心房細動です。この場合、かなりの確率で血液がよどむので、放置すれば脳梗塞が起こりやすくなります。

 また、最近は高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因の心房細動が増えています。そうした病気によって、普段から心臓に負担がかかっているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。