天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

不整脈の治療は「生活の質」が落ちたと感じてから

 心房細動になると、心拍出量が正常な脈拍の2~3割程度落ちるといわれています。動悸、息切れ、思ったように体が動かせなくなるなどの自覚症状があれば、循環器内科を受診してください。

 もうひとつ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による不整脈も増えてきています。夜、寝ている間に何回も呼吸が止まる病気で、心臓、脳、血管に大きな負担をかけます。そのため、昼間に心房細動が起こりやすくなるのです。

 SASの傾向があると指摘されていて、昼間に動悸がある、疲れやすい、脈が速くて息が切れるといった症状がある場合は、まずSASの治療が必要です。就寝する際、鼻にマスクを装着して空気を送り込むCPAP(シーパップ)という治療を行うと、昼間の動悸が治まって、症状が落ち着くケースが多くみられます。すでに不整脈などの症状が出ているSAS患者さんの中には、CPAPがないと怖くて旅行も出張もできないという人もいるほどです。

 自覚症状によって日常生活の質が落ちたと感じた時が、不整脈の治療を始めるタイミングになります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。