天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢の認知症患者も手術できる


 初期の認知症を患っている83歳の老親が大動脈弁狭窄症と診断されました。少し動くと動悸や息切れがしてつらいようです。ただ、高齢なこともあり、手術をしたほうがいいのか迷っています……。(53歳・男性)


 医療機器や技術の進歩により、いまはたとえ90歳でも活動的な方なら手術は可能です。患者さんが自分で歩いて病院に来られる状態であれば、「手術はしない方がいい」というケースはまずありません。

 2012年のデータでは、当院で行った心臓血管手術のうち、80歳以上の患者さんが占める割合は12.5%です。狭心症、心筋梗塞、弁膜症などによって、日常生活が著しく制限されている。でも、高齢だから……という理由で手術を受けない選択をするのは、非常に残念に思います。

 しかし、高齢のため体力が衰えていたり、他の病気などで全身状態が悪かったり、手術後の補完的治療をすることが難しい場合は、手術を受けるのは好ましくないといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。