天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「心臓リハビリ」が再発を防ぐ


 半年前に心筋梗塞の手術を受けました。医師からは治ったと言われていますが、再発が怖くて何もする気になりません。体は動かしたほうがいいのでしょうか?(65歳・男性)


 心臓手術を受けた後、再発を恐れて家に閉じこもってしまう患者さんは少なくありません。私が3年ほど前に僧帽弁閉鎖不全症と心房細動の手術を行った患者さんもそうでした。

 僧帽弁閉鎖不全症は患者さん自身の弁を修理する弁形成術、心房細動のほうは頻拍を起こりにくくするメイズ手術を行い、いずれも問題なく終わりました。しかし、術後に「なかなか脈拍が戻ってこない」というのです。ペースメーカーを埋め込むほど悪い状態ではなかったのですが、本人は「エンジンが思ったほど回っていない」と自覚症状を訴えます。そのため、しばらくは怖くて体を動かせない状況が続いたのです。

 しかし、それから3年が経ち、先日、その患者さんと初めて一緒にゴルフコースを回りました。自分なりに練習を続けていたようで、「最近、やっと300球打てるようになりました」と喜んでいました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。