天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「心臓リハビリ」が再発を防ぐ

 再発を恐れて動けなかった患者さんの心の扉の鍵を開けたのは「心臓リハビリ」です。地道にコツコツとリハビリに取り組んだことで、徐々に自信を取り戻していったのです。

 手術が成功し、日常生活に戻るまでには心臓リハビリが非常に重要です。かつては、術後1週間近くは集中治療室で安静にするのが当たり前でしたが、それでは筋力、呼吸機能、体力が衰え、日常生活に戻るまでに時間がかかります。そのため、一般的には手術の翌日からベッドを離れ、2~3日で病棟内を歩き回るリハビリを開始するようになりました。

 退院後も心臓リハビリを続けることは大切です。リハビリを行うと、心筋梗塞の再発を防げることも分かっています。怖がって安静にしているより、体を動かすことが重要なのです。術後、半年間は健康保険が適用されるので、その間は続けるのが望ましいでしょう。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。