天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「心臓リハビリ」が再発を防ぐ

 心臓リハビリにはさまざまなメニューがあります。ストレッチやエクササイズで体をほぐしたり、トレッドミル(ウオーキングマシン)や自転車エルゴメーターなどの機械を使った負荷試験が行われます。その際、酸素消費量、心肺機能変化、血圧といった重要なデータをモニターしているので、「このぐらいの運動では、何も異常は出ません」という客観的な評価を本人に伝えることができます。患者さんはそうしたリハビリ試験をクリアするたびに「これなら大丈夫だ」と自信をつけていくことができるのです。

 心臓の機能は回復しているのに精神的にストッパーがかかっている人は、心臓リハビリが環境適合性を高めてくれます。前出の患者さんもそうでした。医療機関側からすれば治療効果をみるものですが、患者さん側からみると客観的評価をもらいながら自信をつけていくことができる有意義なものなのです。

 リハビリをしっかりやれば、「手術前よりも心臓の状態が悪くなった」というケースは皆無です。前出の患者さんのように時間がかかる人はいても、「こんなことなら手術なんてしないほうがよかった」という患者さんは見当たりません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。