天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

禁酒と腸内環境の改善で手術が楽に

 実際、これまでより肉体的にも精神的にも楽に手術ができるようになったと感じるので、禁酒と腸内環境改善の効果はそれなりに出ているといえるでしょう。これで、さらに質の高い手術を追求することができます。

 私は、自分に課している高いレベルの手術ができなくなったとき、心臓外科医をきっぱり辞めるつもりでいます。しかし、今も手術の技術は進化していると自負していますし、現役である限り、まだまだ手術の数と質にこだわっていきたいと考えています。

 40代の頃は、「心臓外科医がメスを持っていられるのは55歳ぐらいまでだろう」と、先輩外科医をみて思っていました。すでに55歳を越えてしまいましたが、それでも自分が思い描く通りの手術をすることができています。かつての自分の発言は間違っていた。気力と体力の衰えさえなければ、心臓外科医の“賞味期限”は年齢ではないと思えるようになりました。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。