天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

禁酒と腸内環境の改善で手術が楽に

 もちろん、年齢に応じた体力の衰えはポツポツと出てきてはいます。しかし、そうした衰えをカバーしてくれる機器との出合いや知識の積み重ねが、さらに自分を前進させてくれています。

 以前にもお話ししたように、42歳を越えたあたりから調節力の低下を自覚し、48歳から暗いと見えにくいという老眼の症状が表れましたが、多重焦点コンタクトレンズがその悩みから救ってくれました。

 ちょうどそれと同じくらいの時期、トイレが近くなりました。こらえ性がなくなるといえばいいのか、加齢による前立腺の変化が始まったのでしょう。

 手術は長いケースになると7~8時間連続で手術室に入ります。通常の場合、手術時は緊張しているため尿閉のような状態になり、排出しにくくなるのですが、どうしても尿意を我慢できない時は手術室を出てトイレに行きます。ただ、その際は手洗いや消毒など手術の準備を初めからすべてやり直すので、20分ほど余計に時間がかかってしまいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。