天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本は入院日数を短縮すべき

 インドに比べ、患者さんの平均年齢が高い日本では、術後の入院日数をインド並みに当てはめるわけにはいきません。それでも現状より2~3日は短縮すべきです。これ以上、医師の数を減らさないという前提のもとであれば、日本でも十分にできるはずです。

 膨らみ続ける医療費を削減するため、厚労省もベッド数を減らそうと動いています。これは方向性としては正しいと思っています。患者さんの側からすれば、「病気になっても受け入れてもらえないケースが増えるのでは……」と不安に思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。本当に必要な患者さんに、より質の高い医療が提供できるようになると考えています。

 現在、日本の病院では、安定した状態で療養のためだけに入院している患者さんも多くいます。不必要な入院は減らさなければなりません。

 重篤な状態で緊急に治療が必要な患者さんに対する医療を行う「高度急性期病院」、状態回復のために治療が必要で継続入院をするための「慢性期病院」といったように、病院ごとの機能を見直し、有効に使われていない病床を整理する必要があります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。