天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本は入院日数を短縮すべき

 そうなれば、本当に入院が必要なケースはどんな状態なのかを見極める医師の責任は重くなります。入院だけで経過観察という形がなくなり、本当に入院が必要な患者さんに、より高度な医療を提供するようになるのです。同時に、患者さんの側も“とりあえず入院”ができなくなるため、1次予防に気を付けるようになるでしょう。

 病院の“すみ分け”をはっきりさせ、無駄な入院を減らしていくためには、手術を担当する外科医が、退院後のケアを担ってくれる医療機関や医師を患者さんに紹介することも求められます。

 最近、術後に外来で当院を訪れる高齢の患者さんに目立つのが圧迫骨折です。老化によって骨粗しょう症が進み、尻もちや、くしゃみといった少しの衝撃で、脊椎が変形してしまいます。場合によっては、寝たきりになったり車いす生活を余儀なくされるきっかけになってしまうので、予防に努めなければいけません。

3 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。