天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本の手術はムダが非常に多い

 今年の2月にインドのバンガロールを訪れ、病院を視察してきたお話の続きです。人口爆発国であるインドの医療や心臓外科のレベルがどの程度のものなのか、実際に自分の目で確かめるために出かけました。

 現地では、低所得者向けの病院と富裕層向けの病院の両方を視察。同じ手術を受けた場合、低所得者向けの病院では費用が10万円ですが、富裕層向けの病院では20万円かかります。日本円では10万円の差ですが、インドでは公務員の平均月収が約1万~2万円ほど。10年目の医師の月収が約20万円ですから、患者さんにとっては大きな違いです。

 圧倒的に人口が多い低所得者層の方が患者さんの数も多いため、低所得者向けの病院は400床で年間6000件の手術が行われているのに対し、富裕層向けの病院は200床で手術件数は年間250件。患者さんのニーズに合わせて、効率よく医療を行っているなという印象を受けました。これは、今後の日本の医療にとって大いに参考になります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。