天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

インドではエコノミークラス症候群の手術が普及

 突然、肺動脈が詰まる急性肺塞栓症の他に、詰まった部分を起点に徐々に太い肺動脈を閉塞していく慢性肺血栓塞栓症があり、インドでは後者の手術が数多く行われていました。

 バンガロールがあるインド南部は熱帯気候で暑いため脱水状態になりやすく、血栓ができやすい気候といえます。また、国土が広く移動に飛行機を使うケースも多いので、エコノミークラス症候群が起こりやすい環境です。そのため、手術による治療が普及しているのです。

 日本では、内科治療が一般的で、詰まった血栓を薬で溶かしたり、カテーテルを挿入して血栓を取り除くことが行われています。しかし、手術で血栓を除去する肺動脈血栓摘除術という外科治療を行えば、内科治療よりも患者さんの生活の質を向上させることができると考えています。

 エコノミークラス症候群は、働き盛りの30代から70代までの幅広い年齢層に見られる疾患です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。