これまでの手術では、ガチガチに硬くなった弁をハサミで丁寧に切り取り、弁があった箇所の石灰化した部分を削って取り除いた後、人工弁を留置して糸を何本もかけて縫合していました。人工心肺を使って心臓を止めている時間は、およそ50~60分ほどかかります。
それがスーチャーレス弁を使えば、人工心肺を動かしている時間も手術全体の時間も半分に短縮できるのです。そのうえ、それが適合する人に関してはピタッとフィットして、弁の周辺からの血液の漏れも少ない。
縫合する必要がないので、誰が行っても同じ時間しかかかりません。外科医の技量もそれほど問われなくなり、安全性も高まります。
TAVIと違って、胸を切開して実際に心臓を見て処置するので、予期せぬトラブルが起こっても制御可能です。その分、安全性や合併症の発生率はTAVIよりも低い可能性もあります。現時点ではTAVIの適応から除外されている透析患者さんですが、より安全に手術を受けられるようになるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」