天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

目の衰えをカバーしてくれた“秘密兵器”

 それ以来、ずっと多重焦点コンタクトレンズを使っていて、いまはもう3代目になります。ただ、学生の頃からやっているテニスには向きません。レンズの特性から、相手が打った速いボールに対応できないのです。ボールが動かないゴルフは問題ありませんが、打ったボールの行き先は追えません(笑い)。

 順天堂大学で手術患者さんが増えてきたタイミングで、視界の暗さも感じるようになりました。手術室の光量が少し足りないと、手先が見えにくいと思うようになってきたのです。

 そんな時に登場したのが、キセノンライトです。手術中に頭に装着するヘッドライトは、それまでハロゲンランプが主流でした。

 ハロゲンは少し黄色っぽい光ですが、キセノンは白い光を発します。ハロゲンの2~3倍の明るさが得られるうえ、光を照らす範囲もハロゲンより広いため、視認性に優れているのです。キセノンのヘッドライトのおかげで、暗さを感じることはなくなりました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。