天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

リハビリ期間中の自転車は厳禁

 心臓手術を受けた後、日常生活に戻るまでには「リハビリ」が重要だということは先週もお話ししました。

 ただし、リハビリに取り組む際に気をつけなくてはならないポイントもあります。まず、自己判断で無理をしないことです。

 一般的な心臓手術では、胸にある胸骨を切開します。術後は金属のワイヤで骨を閉じているだけなので、しっかりと骨が接合するまでには3カ月程度かかります。寝起きする際の動作などはゆっくりと行うこと。両腕を使わないと持ち上げられないものを持ったり、自転車に乗るのも厳禁です。上半身に負担が大きいスポーツや肉体労働も3カ月は控えるようにしてください。

 リハビリを始めてまだ間もないのに「もう動ける」と勘違いした患者さんが、いきなり自転車に乗って痛みがぶり返し、病院に逆戻りしたケースもあります。保険が適用されるリハビリの期間は半年間です。その間は、担当医師や看護師に相談しながら、心臓に負荷をかけすぎないように順を追って続けていくことが大切なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。