天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

リハビリの基本は早く離床し歩くこと

 心臓手術が成功し、日常生活に戻るまでにはリハビリが非常に重要です。リハビリを積極的にやった人とやらなかった人では、社会復帰までにかかる期間や、復帰してからのアクティビティーに雲泥の差が出ます。

 2012年の2月中旬に冠動脈バイパス手術を受けていただいた天皇陛下のその後のご回復ぶりも、熱心なリハビリのたまものといっていいでしょう。術後、入院中の陛下は屋内でトレッドミル(ウオーキングマシン)を使った歩行運動にコツコツと取り組まれ、その後は皇后陛下と一緒に病院内の廊下を歩く院内歩行を続けられました。

 3月初めに退院されてからは、徐々に距離を延ばしながら御所の中を散策されたり、階段を上り下りされたりと、軽い運動を伴うリハビリを繰り返されたそうです。

 そして、同11日には東日本大震災の1周年追悼式典に出席、手術から3カ月後の5月中旬には、英国のエリザベス女王の即位60周年を祝う式典に参加するためにロンドンを訪問なさっています。強い意志を持って実直にリハビリに取り組まれた成果といえるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。