私にも、かつて感染症で2人の患者さんを失った苦い経験があります。いまの順天堂大に着任した直後の02年、術後の傷の治りが悪くて苦労している患者さんがいました。私が着任する前に手術を受けていた患者さんで、担当医も原因が分からず首をかしげていました。後になって判明したことですが、実はその患者さんはMRSAに感染していたのです。
そうとは知らなかった担当医にも感染。それが分かるまでの間、比較的簡単な手術を任せたり、助手を務めてもらっていたため、その担当医が携わった3人の患者さんも感染してしまいました。
最初の患者さんはアッという間に、2人目の患者さんはリハビリを開始する段階まで回復していたのに亡くなられました。最後のひとりはギリギリで食い止めることができましたが、われわれスタッフの間に大きなショックが広がりました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」