天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

6つの危険信号を見逃してはいけない

 安静にしているのに息切れを感じたり、寝ているだけで呼吸が苦しくなり、前かがみに座って肩でやっと息をできる状態(起座呼吸)になる人も、心臓病の可能性が高いです。とりわけ、一度でも起座呼吸を経験したことがある人は、すぐに診察を受けてください。

 また、仮に自覚症状がなくても、糖尿病、高コレステロール、高血圧、肥満、喫煙といった冠動脈疾患の危険因子があり、若い頃とはちょっと違う息切れや、心臓に負担がかかっているように感じる人は循環器内科を受診した方がいいでしょう。

 胸部レントゲン検査、心電図検査、血液検査(BNP検査を含む)を行い、心臓超音波検査(心エコー)までやっておけば、たとえ自覚症状がない無症候性心筋虚血の患者さんだったとしても、早期治療によって突然死する確率を低くできます。

 普段から自分の心臓の状態を把握しておくことも重要です。まずは、朝起きてすぐ、もしくは座って5分間安静にしたあと、呼吸を整えてから脈拍を測りましょう。1分間に何回脈打つか(15秒間の回数を4倍してもよい)を数えます。成人の場合、安静時の脈拍は1分間に60~80回です。100回を超えていたり、50回を下回る場合は、循環器内科で診てもらってください。

 朝晩の血圧測定も大切です。週3回以上、「最高140mmHg/最低90mmHg」を超えているようなら、医師に相談しましょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。