天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

症例数クリアする心臓外科医は15人程度

 突然、発作を起こして救急搬送されるようなケースは別ですが、心臓病の治療を受ける際には、病院と医師をしっかり選ぶことが大切です。心臓病の治療や手術は、医師の技術や経験によって結果が左右されるケースが多く、病院によって格差があるのが現実だからです。

 2カ月前、50代前半の男性患者さんの再手術を行いました。その患者さんは、ある大学病院で最初に心臓の弁を取り換える手術を受けたのですが、研修医による未熟な手術だったためか再手術となり、次は大動脈基部置換術(大動脈弁・大動脈基部・上行大動脈を弁付き人工血管で置換する手術)が行われました。

 しかし、それもうまくいかずに、今度は心臓と胸骨の間に動脈瘤ができてしまったのです。動脈瘤は皮一枚を隔てた場所にあり、メスを入れた瞬間に大出血を起こす可能性が高く、病院側は〈これ以上、手術はできません。天寿をまっとうするしかありません〉と宣告したそうです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。