日頃から平地歩行のみで、ただ食事をして睡眠を取るといった生活をしている高齢女性は、だいたい1日2000~3000歩しか歩かないといわれています。そういう生活なら、心臓の筋肉が薄っぺらでも何とかなってしまうので、心臓の筋力はどんどん衰えてくるのです。そんな人が急にジョギングを始めたりすると、心臓のトラブルにつながります。心臓にとって、適度な運動がいかに大切かお分かりいただけたでしょうか。
また、若い頃から長期間にわたって激しい運動を続けていた人も、注意が必要です。たとえば、アスリートが現役を引退するなどして突然、ほとんど運動しないような生活にシフトすると、心臓の筋肉が薄っぺらくなってきます。筋肉量が落ちて脂肪に変わってしまう「サルコペニア肥満」と同じようなことが心臓にも起こるのです。
そうなると、不整脈疾患を起こしやすくなります。実際、アスリートの中には「心房細動」で困っている方がいて、私も相談を受けます。心臓が細かく不規則に1分間に250回以上も収縮を繰り返す不整脈の一種で、これが起こると血栓ができやすくなり、脳梗塞などのリスクがアップします。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」