天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

運動しない人の心臓は筋肉がペラペラ

 日頃の運動により、より多くの血液を体中に循環できるように鍛えられていた心臓は、それに見合った大きさになっています。とりわけ、肺から血液を受ける左心房が通常よりも大きくなっているケースが多い。そうした人が運動をやめてしまうと、拍動をコントロールしているシステムが崩れて、心房細動を起こしやすくなるのです。現役時代に頑張っていた人ほど、心房細動になるケースが多い印象を受けます。

 アスリートと同様に、ミュージシャンも心房細動が多く見られます。歌を歌ったり、演奏活動をしたりする際、より多くの血液を循環させるような心臓の鍛え方をしているからでしょう。

 また、アスリートやミュージシャンは、高血圧である傾向が強いことも、心房細動が多い一因です。運動も演奏活動も、ピーク時は血圧が180~200㎜Hgくらいまで上がります。そうした血圧の上がり下がりを繰り返していることも、心房細動の原因になるのです。

 ずっと心臓を守っていくためには、やはり適度な運動が大切なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。