天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

睡眠薬の常用がいちばん困る

 高血圧、高脂血症、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病は、心臓病を引き起こすリスクをアップさせます。心臓手術を受ける患者さんは、何らかの合併症を抱えているのが当たり前です。それだけ数多くの経験が蓄積されているので、しっかりしたエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療をすることができます。

 しかし、中には厄介な生活習慣を抱えている患者さんもいます。いちばん大変なのは、睡眠薬を常用している患者さんです。手術の準備のために入院する際、睡眠薬はやめてもらいますが、患者さんは「眠れない」と訴えます。本当のところ人間はどこかで必ず睡眠を取っているのですが、普段から睡眠薬に依存している患者さんはそれを実感できず、「眠れない」という不満をためて術前の管理に悪影響を及ぼします。また、睡眠薬に依存している患者さんは手術後に転倒事故などを起こして、病院の管理上のトラブルを招きやすくなります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。