手術中も、麻酔が効きにくかったり、血圧が高めに推移したりといったマイナス面がありますが、こうしたリスクは経験があればだいたい回避できるものです。しかし、外科医の力が及びにくい部分、「患者さんがもともと抱えている“持病”をどうやってなだめながら管理するか」という問題は、一筋縄では対処できません。
どうしても、患者側の「睡眠薬を飲みたい」という権利を認めるか、病院側の「安全管理」を優先させるかのせめぎ合いになります。
こちらが「危ないのでロープの中には入らないでください」と言っているのに、患者さんは「いつもはもっと近くまで行っているんだからいいじゃないか」と入ってきてしまう。それだけ、睡眠薬を常用している患者さんは厄介なのです。
喫煙の習慣がある患者さんに困ったこともあります。私がまだ30代前半だったころ、冠動脈バイパス手術を受けるために大阪から足を運んできた50代の患者さんがいました。「手術には禁煙して臨む」というのが大原則でしたが、その患者さんは一向にたばこをやめません。当時は病院内の禁煙が徹底されていなかったこともあり、他の患者さんが何人もいる病室でも、お構いなしにたばこをふかしていました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」