天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

睡眠薬の常用がいちばん困る

 当然、手術のために禁煙しているほかの患者さんから苦情が殺到しましたが、その患者さんは私がたばこをやめるよう説明しても聞く耳を持ちません。結局、決まっていた手術日程をすべて白紙に戻し、「禁煙ができていない患者さんの手術はしません。すぐに退院してください!」と一喝して大阪に帰ってもらいました。

 数カ月後、その患者さんは「禁煙したので手術をお願いします」と再び来院され、今度は引き受けました。今は病院内での禁煙が当たり前で、そうしたトラブルはなくなりましたが、強く印象に残っている出来事です。

 ただ、近年は喫煙習慣がある患者さんの手術に対して、そこまで神経質にならなくてもよくなっています。検査機器の進歩によって肺機能を科学的に分析できるようになったので、患者さんの肺機能を検査して、悪ければそれなりにケアしながら処置できるようになりました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。