当然、手術のために禁煙しているほかの患者さんから苦情が殺到しましたが、その患者さんは私がたばこをやめるよう説明しても聞く耳を持ちません。結局、決まっていた手術日程をすべて白紙に戻し、「禁煙ができていない患者さんの手術はしません。すぐに退院してください!」と一喝して大阪に帰ってもらいました。
数カ月後、その患者さんは「禁煙したので手術をお願いします」と再び来院され、今度は引き受けました。今は病院内での禁煙が当たり前で、そうしたトラブルはなくなりましたが、強く印象に残っている出来事です。
ただ、近年は喫煙習慣がある患者さんの手術に対して、そこまで神経質にならなくてもよくなっています。検査機器の進歩によって肺機能を科学的に分析できるようになったので、患者さんの肺機能を検査して、悪ければそれなりにケアしながら処置できるようになりました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」