頭の中にインプットしておけば、手術をしている最中、「あ、ここから先をこう進めてしまったら、絶対に以前と同じこういうシーンに出くわすな」と瞬時に画像が浮かび上がり、頭で考えるより先に指をはじめとした体全体が反応します。
それまで一気にバーッと進めていた手術でも、血管に針を通したとき、「ああ、これは急いではいけないところだな。時間をかけてしっかりやらなければいけない」と察知して、その時点から自然とほふく前進のようにじっくり進む瞬間があるのです。これは、食事をするのと同じように自分の体に染みついています。
これまで行ってきた満足度の高い手術をやり遂げた場面も、まるでスナップ写真のように頭の中に整理されています。その写真はどんな状態にでも浮かび上がらせることが可能で、3Dの立体的な画像として再生したり、心臓の血管部分だけを超ズームにしたり、必要のない部分をぼかして頭に描くこともできます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」