天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

体調の変化を医師に伝えれば合併症のリスクは減る

 たとえば、手術を終えて退院後、2週間ほどしてから外来で医師の診察を受けた時、「最近、ちょっと血圧が高いんです」などと体調の変化を伝えることは非常に重要です。患者さんが普段から自己管理に努めていれば、そうした変化に気付くことができるのです。

 もちろん医師のほうも、患者さんのそうした一言を聞き逃すことなく、「重大なキーワード」としてとらえられるかどうかが大切です。

「血圧が高くなった」と言われた時、「自宅に戻って生活環境が変わったからだろう」程度にとらえて様子を見ている間に、脳出血を起こしてしまうケースもあるのです。患者さんの一言を重大なキーワードと察知して血圧を下げる薬を処方しておけば、防げたかもしれません。これは、医師の実力といえるでしょう。

 また、手術前よりも状態が悪化した患者さんがいた場合、医師の良しあしが表れます。悪化していることが分かった段階で、「手術した結果、予想とは違ってこういう状態になってしまったから、新たな対処をしなければなりません」と正直に情報を公開する医師もいれば、「手術はうまくいきましたが、あなたの場合は動脈硬化がひど過ぎるから、結果として悪くなってしまった。これ以上は何もできません」といった対応をするとんでもない医師もいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。