これまで紹介してきたように、腎臓疾患やがんといった“合併症”を抱えながら心臓手術を受ける患者が増えているのは、心臓外科だけでなく他科も含めた医療全体が進歩したからだといえるでしょう。
いくつもの疾患を抱えている患者さんでも、それぞれの治療を続ければ、何年も前向きに生きることができるようになります。ただ、そうした患者さんには、次の疾患の治療が控えています。まず最初に手術を担当するわれわれ心臓外科医が処置をパーフェクトに終わらせなければいけないのはそのためです。「自分が専門にしている範囲のことだけやっていればいい」という外科医では、通用しなくなってきているといえるでしょう。
医療の進歩に合わせ、患者さんの意識も大きく変わってきました。たとえば、腎臓疾患で人工透析を受けている患者さんの場合、昔であれば「透析を受けているだけで人生おしまいだ」とか、「もし次に何かトラブルがあれば、自分はそこで終わってもいいや」といったような厭世観がありました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」