天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「穴馬を狙って一攫千金」の発想はいらない

 しかし、今は患者さんの意識がまったく違います。「透析もそれほど悪くない。透析を受ければそれまでと同じような人生を送れるなら、それもいいじゃないか」といったポジティブな患者さんが、ここ10年ほどの間にかなり増えてきた印象です。

 そうした前向きな患者さんの多くは、腎臓の後に心臓が悪いと診断された時、「透析を受けている最中に血圧が急激に下がるので、自分でも心臓が悪いことは分かる。もし心臓を治して透析中のトラブルがなくなれば、それからの人生がまた楽しくなるんじゃないか」と考えるのです。

 ただ、患者さんが前向きなのをいいことに、「こんな新しい治療法がありますよ」とか「今しかこの治療はできませんよ」などと言って、しっかりしたエビデンス(科学的根拠)がない治療を勧める医師がいるのも事実です。これはとんでもないことです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。