もし、心臓病があって心機能が落ちていると、さらに深刻なダメージを受けてしまう。まずは心臓病を治療して、抗がん剤によって少しぐらい痛めつけられても持ちこたえられるような準備が大切になるのです。
以前、国立がん研究センターから、肺がんを抱える心臓病患者の手術を依頼されたことがありました。その患者さんはがんのある場所が悪くて手術ができないとのことでしたが、抗がん剤治療で1年は生きられるといいます。それならば心臓の手術を行う意味もあると考え、手術を引き受けました。
心臓を治して退院した後、結局、その患者さんは1年ほどで亡くなりました。その際、患者さんのご家族がわざわざこちらを訪れてくれて、「おかげさまで、最後の1年間を自宅で一緒に過ごすことができました」と感謝の言葉をかけていただきました。がんは手術できなくても、心臓を手術したことで、患者さんやご家族に喜んでもらえるケースはたくさんあるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」