天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

60歳を超えた心臓は健診だけでカバーできない

 心臓ドックなどの心臓に特化した検査は、すでに胸痛や息切れといった軽い自覚症状が出ている人はもちろん、健康労働年齢である60~65歳を越えたら、1年に1回程度のペースで定期的に受けることをおすすめします。心臓の状態は高齢になると変化してくるので、病気を早期発見するためには、一般的な心電図検査だけではカバーできなくなってくるからです。

 ただ、予防のために受ける心臓ドックは健康保険が適用されていないため、5万~10万円程度を自己負担しなければなりません。

 それでも、定期的に心臓に特化した検査を受けて予防に努めておいたほうが、検査を受けずに病気になってしまったときにかかる費用を考えると、コストパフォーマンスに優れているといえるでしょう。

 もちろん、検査を受けるだけで安心するのではなく、心臓病を予防するための生活習慣の改善も大切です。心臓病につながる高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などの危険因子をなくすために、カロリーの過剰摂取や偏食の改善、運動不足の解消、禁煙に努めてください。

 すでに心臓病と診断されている人は、運動が無理な負担になってしまうケースがあるので、その場合は主治医に相談しながら実施してください。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。