天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

3年後に再会した70歳の患者が連れていたのは…

 心臓手術というと、何やらリスクが高くて難しいものといったイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。たしかに外科手術では、手術によって死亡したり、後遺症が残ったり、感染症になる危険性が少ないながらもあるのがデメリットといえます。

 しかし、日本の心臓外科手術の治療成績は世界でもトップレベルで、手術症例数が多い病院では、予定手術の院内死亡率は2%以下のところがほとんどです。突然、病気を発症して搬送され、緊急手術を受けるようなケースでなければ死亡率はかなり低くなっているので、必要以上に怖がることはありません。

 さらに、心臓手術は日々、進化しています。検査機器の進歩や世界的な情報ネットワークの発達によって、病気の成り立ちや予後の状態といった情報を共有できるようになり、より分かりやすく標準化治療ができるようになりました。

 こうした進歩をベースにして、「イチかバチかの出たとこ勝負」ではなく、事前に緻密に計算したうえで最適な方法を選択して手術を行います。これほどくみしやすい手術は他には見当たらないといってもいいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。