天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

深夜の緊急手術で解離性大動脈瘤に対応

 しかし、患者さんはまだ40歳と若かったこともあり、再手術しなくても済むようにほぼ完璧に何の憂いもない状態に処置しました。これから40年、80歳ぐらいまでは何の問題もないでしょう。

 今回のような緊急手術ではない場合も、解離性大動脈瘤の手術は基本的に同じ人工血管置換術を行います。血管が解離して薄くなってしまった部分は、いつ破裂するか分からないリスクがあります。もし、心臓に近い側で破裂すれば拳銃で撃たれるのと同じことで、一発でアウトです。

 それを避けるために解離した血管を外して取り換える人工血管は化学繊維でできていて、拒絶反応が起こる心配はありません。最近の人工血管は耐久性もあり、数十年は劣化しないようになりました。

 人間には、体内の細胞が増殖し、損傷された組織を元通りに修復する機転があります。そうした体のシステムがいちばん効率よく行えるような形に人工血管を配置したうえで、適度の安静を保っていれば徐々に治癒していきます。最近は、CT(コンピューター断層撮影)などの医療機器の進歩によって、どこに人工血管を置き換えればいいかをかなりの精度で見極められるようになりました。

 ただし、大動脈疾患は手術が成功しても、それで安心というわけではありません。喫煙者なら禁煙するなど生活習慣を改善し、血圧や糖尿の管理も重要になります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。