手術でインプラント(体内に埋め込む人工の器具)を使えば、常に「壊れる」というリスクが付きまといます。術後にしっかりしたメンテナンスも必要です。たとえば歯のインプラントは、どんなに年を取っても、朝、晩、食前、食後に歯磨きなどのメンテナンスが欠かせません。しかし、自分の歯が残っている人なら、歯磨きをさぼったとしても、そうそう歯がボロッと落ちることはありません。
心臓も同じです。たとえば人工心臓なら、壊れて機能が止まれば命も止まってしまいます。しかし、自分の体の中にある“臓器”なら、いきなりすべてが故障することはなく、自分の体を守ってくれるのです。
さらに、いまは長期にわたって心臓を補助できるような耐久性がある血管を使います。陛下の手術もそうでしたが、冠動脈に対しては「動脈」をバイパスとして使うのがベストです。とりわけ内胸動脈は個体差がほとんどない血管で、どれだけ年を取っていても良好な状態にあります。体の中でいちばん動脈硬化が起きにくい血管なので、心臓のバイパスに最適なのです。術後のメンテナンスのための薬もほとんど必要ありません。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」