天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

現代社会は心臓のリスクを急増させている

「頭頂部の毛髪が薄い」「小太り体形」「胸毛が生えている」

 心臓病になりやすい人の3つの特徴です。これまでの手術経験からも明らかで、男性ホルモンの増減が関わっていると考えられます。

 かつては、こうした特徴がある人が心臓病を患って手術を受けに来るのは、65~75歳の間がほとんどでした。しかし、最近はもっと早い段階で手術が必要になる人が増えてきました。

 昔に比べ、心臓の筋肉そのものが弱くなってきたとはいえませんが、心臓を取り巻く血管の冠動脈や大動脈、心臓の中の構造物である弁などが脆弱になったり、早く傷んでダメージを受けやすくなっている傾向は強まっています。社会背景や生活習慣の変化によって、心臓病のリスク因子をたくさん抱えている人が増えているからです。

 日本人は、2000年ごろから総コレステロールの平均値が欧米の水準以上に高くなってきました。日本は狭い国なので、高コレステロールの遺伝子を持った人同士が一緒になるケースも多く、高コレステロールの家系ができやすくなります。さらに、いまの若者は食文化から肥満傾向があり、両親が糖尿病で同じ病気を発症する人も多く、以前よりも心臓病につながる動脈硬化因子をたくさん持っているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。