天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

現代社会は心臓のリスクを急増させている

 日本人の男性は、もともとHDL(善玉)コレステロールが少なく、LDL(悪玉)コレステロールが多いため、さらに多くのリスク因子を抱えているといえます。

 インターネットを含む情報通信が飛躍的に発展して、個人社会が確立されたことも大きな要因でしょう。それまでは、「外」とコミュニケーションをとらないと物事を展開できない社会でしたが、いまは自分の中に情報をどんどん取り込んで処理するという世界に変わっています。結果として外に出ていく機会が格段に少なくなり、運動量が大幅に減少してストレスを常に抱える状況が悪影響を及ぼしていると考えられます。

 また、日本ほどコンビニエンスストアが発展しているところはありません。いつでもどこでも24時間好きなものを食べることができる。自制できないとカロリー過多になったり、栄養が偏って肥満体質になり、メタボリック症候群といわれる体質になる人が増えています。これも心臓病になるリスクを高め、寿命を縮めることになるのです。塩分過多などによって、高血圧の人が増えているのも大きな問題です。高血圧は、心臓の形そのものを変えてしまう最大の原因で、さまざまな心臓病を引き起こします。

2 / 3 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。