天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

未熟な心臓外科医を避けるための目安

 経験が少ない心臓外科医では、これに対応できません。そのため、1回目の手術の“遺恨”にはできるだけ触らないようにして、いま問題になっているところだけを処置して終わらせるという選択をします。そうなると“トラブルの種”が残ってしまうので、将来、再びそこが問題を起こす可能性が高くなります。もっとひどいのは、やらなくてもいい手術を実施したうえ、そこで感染などのトラブルを起こして違う病気をつくってしまう場合です。そんなどうしようもない医師もいるのです。

 そうしたレベルの低い心臓外科医がいる病院でも、症例数が多いとランキング本などで評価が高かったりします。患者さんが、術前にそれを見極めるのは簡単ではありませんが、目安はいくつかあります。

 まず、その病院の施設長が、自分で年間250例以上の手術を執刀しているかどうかが重要です。自分で執刀した症例数が少なければ、若い医師の指導をしたり、難しい症例で水準以上の対応をとるのは難しいでしょう。日本でこの症例数をクリアしている心臓外科医は15人程度しかいませんが、そのような病院ではトータルの症例数が年間400例、1日1例以上ぐらいあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。