また、術後に心房細動による脳梗塞を防ぐには、血液をサラサラにする抗凝固剤を飲むしか方法がありません。しかし、人工的に血を止まりにくくする薬は、何かアクシデントがあった時に重篤な状態になってしまうリスクが高い。手術を受けた後、抗凝固剤を飲んでいた患者さんが転倒し、脳出血を起こして植物状態になってしまったケースもあります。
そうした心配を取り除いていただきたいという思いから、当時、78歳とご高齢だった陛下に左心耳縫縮術を受けていただいたのです。実際、手術中に心房細動が起こりましたが、万全の準備を整えていたおかげでスムーズに処置を行うことができました。これによって、心臓の血栓が原因で脳梗塞を起こす可能性はほぼなくなったと自信を持っています。
心臓手術がどんなに完璧でも、術後に脳梗塞を起こす患者さんは少なくありません。しかし、同時に左心耳縫縮術を行っておけば、かなりの割合で脳梗塞の心配を取り除けるのです。われわれが取っているデータでも「脳梗塞のリスクが高い人に対しては、左心耳縫縮術によって脳梗塞をほぼパーフェクトに防げる」ことがわかっています。近いうちに海外の学会で発表する予定です。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」