そうしたエビデンスに基づき、いかに“賞味期限”が短い血管を使わないように避けるか。将来的に血管が傷んだとしても、いかに心臓全体に影響を及ぼさない場所に使うか。そうしたリスクを考慮しながら組み立てていくのが今の心臓手術なのです。
手術の際は、まず「この患者さんはこのぐらいの手術時間なら耐えられるだろう」という見込みを立て、次に「その時間内でどのぐらい効果的なことができるか」を計画し、その次に「その時点で考えられる最も妥当な材料(血管)」を選択していきます。
25年前のような「とにかくその場で助けられればいい」という手術ではなく、患者さんのこれからの人生が先詰まりにならないようにリスクをしっかり測りながら、年齢や性別から考えられる平均余命以上を獲得できる手術をしていく。
これが、現在の心臓手術で大事なことなのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」