天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「はやい、安い、うまい」が患者を救う

 患者さんの負担を軽減するには、とにかく素早く手術を終わらせることが基本になるのです。

 私が手術を手掛け始めた25年前に比べると、技術の進歩などによって手術時間を大幅に短縮できるようになっています。

 先月、08年に冠動脈バイパス手術を受けた50代後半の女性の再手術を行いました。1度目の手術が行われたのは6年前で、長持ちするとされている左内胸動脈と足の静脈がバイパスの血管として使われていました。

 しかし、内胸動脈は早い段階で詰まっていて、足の静脈も複数の場所が詰まった状態でした。1度目の手術後に心筋梗塞を起こし、他の血管もかなり傷んでいました。

 しかも、1度目の手術でバイパスとして使用するのに最適な血管は使われてしまっています。

 もし25年前なら、2度目のバイパス手術に使う血管を探すのに苦労し、手術時間も長くなってしまったでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。