今押さえておきたいがん治療

小児の白血病 治る時代。必要なのは長期フォローアップ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 小児がんは、15歳未満の子供がかかるがんの総称で、最も多いのが白血病だ。その現状はどうなっているのか。国立成育医療研究センター小児がんセンター・松本公一センター長に聞いた。

「小児がんのひとつ、白血病の治療成績は、数十年前とは比べものにならないぐらい改善し、ここ数年でも一段と良くなっています」

 成人がんは年間六十数万人の新患がいるのに対し、小児がんは2000~2500人。一番多い小児の白血病でも700人ほどと少ない。

 そのため薬の開発は遅れがちだが、白血病に関しては、従来の薬を組み合わせた治療法の進歩により、治癒率が高くなっている。

「白血病には骨髄性、リンパ性とありますが、小児のリンパ性白血病の場合、7~8割が治ります。逆に言えば、まだ2~3割は治らないことがあります。薬は、不要な合併症を避けるためにも、最小限で最大限の効果を狙わなくてはなりません。日本では未承認ですが、さまざまな分子標的薬の研究が行われており、再発したり、治りにくかった患者さんにも闘う術が出てきています」

 急性リンパ性白血病の治療は、副腎皮質ホルモンと抗がん剤数種類を4~6週間投与する「寛解導入療法」から始まる。「寛解」とは、骨髄中の白血病細胞が5%未満まで減った状態。

 続いて、残った白血病細胞を殺すため、さらなる抗がん剤投与などで寛解の程度をより深める「強化療法」、根治目的で外来で経口抗がん剤を1~2年投与する「維持療法」の3段階で進む。再発したり治療の効果がなければ、造血幹細胞移植などを検討する。

 近年、注目が高まっているのが、小児がんの長期フォローアップの必要性だ。

「小児がんは治療を終えてからの人生が長く、白血病の治癒から何年も経って薬の合併症が出てくる『晩期合併症』という問題が起こることがあるのです」

 成長障害(低身長)、不妊、2次がんなどだ。小児がんが治癒した後も定期的に病院に通い、検査を受けることが望ましい。しかし、成人してからは医療費補助の対象から外れて自己負担額が発生することもあり、「今は元気で問題ないから」と病院に来なくなる患者もいる。

「成人を診る医師にも、小児がん全般に興味を持ってもらい、フォローアップをしてもらわなくてはなりません。しかし、現在は専門が細分化されているのでなかなか難しい。小児がんを患った患者をトータルに診療できる成人施設との連携体制が早急に必要なのです」

 2年前に全国15の小児がん拠点病院が指定され、小児がん診療の体制は整備されつつある。治療歴登録を含んだ小児がん登録制度の見直しを含めて、長期フォローアップのシステムづくりを検討中だ。

 つらい治療を乗り越えた小児がん克服者を社会全体で支える仕組みが求められている。