乳房自己触診の無作為化大規模試験として世界的に注目された「上海研究」は、中国の女性工場労働者約27万人を対象に実施された。①自己触診を行ったグループ②行わなかったグループに分けて10年以上も追跡したところ、乳がんによる死亡率はどちらも変わらず、乳がんと診断された時の進行度も同じだった。また、自己触診を指導しても早期発見にはつながらないことも明らかになった。
「かつては、自己触診が有効かどうかに関するしっかりした調査が行われていなかったため、日本では『がんは早期発見した方がいいに決まっている。とにかく自分で触って見つけましょう』とされていました。しかし、海外の大規模研究が報告されはじめ、いまはそこまで勧めるケースは少なくなっています」(上野医師)
現在、米国では「自己触診は良性疾患の発見は増えるが、死亡率低減効果はないので奨励しない」とされている。日本でも、国立がん研究センターの「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」で、視触診単独法は死亡率の減少効果の有無を判断する証拠が不十分で利益と不利益のバランスが判断できないとして、推奨グレードは低い。
徹底解説 乳がんのなぜ?