役に立つオモシロ医学論文

テレビを見過ぎると体に悪い?

 テレビを見る習慣は、日本人であればごく一般的な行動といえましょう。全国の16歳以上の3600人を対象に、NHK放送文化研究所・世論調査部が実施した「日本人とテレビ2015」によれば、1日4時間以上テレビを見る人は37%、6時間以上では15%となっています。

 海外の研究ではテレビの長時間視聴時と心臓病リスクの関連性が示唆されていましたが、日本人での報告はこれまでありませんでした。そんななか、40~79歳の日本人(男性3万5959人、女性4万9940人)を対象にテレビの視聴時間と循環器疾患による死亡のリスクを19.2年(中央値)にわたり追跡した観察研究が、日本循環器学会誌2015年9月7日電子版に掲載されました。

 対象者をテレビの視聴時間が1日に2時間未満、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間以上の6つのカテゴリーに分類。脳卒中、心臓病、そして循環器疾患全体による死亡を検討しています。解析にあたり、BMI、喫煙、飲酒、睡眠時間、スポーツ時間、歩行時間、糖尿病や高血圧など結果に影響を与えうる因子で調整しています。

 その結果、テレビの視聴時間が1日2時間未満と比較して、6時間以上では脳卒中による死亡が10%、心臓病による死亡が24%増加する傾向にありましたが、統計的に有意な差はありませんでした。しかしながら循環器系の疾患全体(脳梗塞や脳卒中などを含む)による死亡では14%で、統計的にも有意に増加しました。5時間以下では明確な差は出ませんでした。

 テレビを6時間見る生活にならざるを得ない環境というと、寝たきりの病人やお年寄りを想像します。その点、この結果には議論の余地もありそうです。しかし、少なくともテレビを6時間以上、視聴する生活は健康的とは言えないかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。