レーシックは手術後が大事 「注意すべきこと」を医師に聞いた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 目にレーザーを当て、角膜を削って視力を矯正するレーシック手術に対し、2009年に起こった某眼科の患者集団感染事件以降、マイナスイメージを抱いている人は多い。しかし、適切な人に、適切な方法で行えば、非常に優れた治療のひとつだ。レーシック手術後に知っておくべきことを、「南青山アイクリニック」の戸田郁子院長に聞いた。

「レーシック手術によって、その後、“何らかの目の治療ができなくなる”“新たな病気が起こる”などと不安に思っている人がいますが、誤解です。手術の適応を正しく選択し適切に行えば、できなくなる治療も新たな病気が起こる可能性もまずありません。ただ、レーシック手術後に起こることを知っておくと、今後の治療に役立つことがあります」

 まずは、「白内障の手術の時、眼内レンズの度数の計算に注意が必要になる」という点だ。

 白内障は、加齢などで水晶体が濁り、物が見えにくくなる。薬で進行を遅らせられるが、生活に困るようなら、水晶体の代わりに「眼内レンズ」を入れる手術しか治療はない。

 眼内レンズの度数には計算式があるが、これはレーシック手術をしていない目を前提に作られたもの。レーシック手術で角膜の形を変えていると、計算式の結果にズレが生じることがある。

「レーシック手術後にも対応した新たな計算式も開発されていますが、やはり自分でレーシック手術“前”のデータを持っておくべき。カルテの保管義務期間は5年なので、必要時には破棄されていることもありますから」

■レーシック手術そのものが向いていないこ人も

 次に、「緑内障では眼圧の測定値が問題になる」点に注意する。

 眼圧の測定値は角膜の厚さに依存する。レーシック手術後は角膜が薄くなっているので、眼圧が低く出やすい。つまり、“見た目の眼圧”と“実際の眼圧”に差が出る。

「眼科医はこれを念頭に置いておかないと、緑内障で眼圧が高くなっているのに、気づかないことがあります」

 緑内障の治療をレーシック手術の直後に始めるのはそもそも勧められないが、眼圧が安定した緑内障、あるいは軽度の緑内障ならレーシックが適応になることもある。

 緑内障の治療を受けていた途中でレーシック手術を受け、その後、見た目の眼圧が下がっても、実際の眼圧が下がったわけではないので注意が必要だ。

「白内障と同様に、手術前のカルテを持っておくことをお勧めします」

 レーシック手術は「術後の見え方のトラブル」が一時期騒がれたが、手術よりも、医師と患者の手術前のコミュニケーション不足によるところが大きい。

「よく見えるようになっていたのに、何年か経って視力が低下した。これは、レーシック手術後に近視が進んだなど目の加齢性変化によるものなので、レーシック手術を受けていない方でも起こりうることです」

 見えすぎてつらい――。これは、「遠くがすごくよく見える方がいいだろう」などという医師の一方的判断で、強めに矯正を行うことが理由。どこまで見えるようにするかは、患者のライフスタイルや要望によって千差万別なので、手術前にきっちり話し合い、意見を同一にしておくべき。

 神経質すぎる人には、見え方が変わるレーシック手術そのものが向いていないこともある。

「コンタクトを使っているが、アレルギーやドライアイでどうしても合わない。そういう人には、レーシック手術はQOLを上げる手段として非常に良い。もちろんレーシック手術だけが近視治療ではないし、ほかの治療法もある。受けた方がいい人もいる一方で、むしろ受けない方がいい人もいる。正確な情報を入手し、メリットを冷静に判断し、技術と実績のある医療機関を選ぶことが最も重要なのです」

 感染症、角膜混濁などのリスクも「知っておくこと」としてよく挙げられるが、医療機関の選別によって回避することは十分に可能だ。

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