知る人ぞ知る、島根県のクロモジ茶。クロモジ(クスノキ科)の木は資源量がそれほど多くないため、これまであまり市場には出回ってこなかった。
それゆえ、“幻のお茶”ともいわれてきたが、その価値は希少性だけではない。松江市でクロモジ茶の製造をしている「風と森と水の国」代表の大谷修司氏は言う。
「昔から汚れた血液をきれいにする作用があるといわれています。周囲では胃腸が悪い人や腫瘍ができた人によく飲まれています」
クロモジにはリナロールという、アロマセラピーにも利用される成分が豊富に含まれている。
「リナロールは免疫機能を高めるほか、抗菌・殺菌、抗ウイルス効果があるといわれています。また、呼吸器や泌尿器の感染症にもよく、昔の人は経験的にこうした作用を知っていたのではないでしょうか」(大谷氏)
昔はクロモジの枝のみを煎じていたが、大谷氏は葉も利用し、香りも楽しめるようにしている。
実際、飲んでみると、森の爽やかな香りと、軽やかな甘味を感じる。自然とリラックスでき、いつのまにか癒やされている。体の中の悪いものを洗い流してくれるかのようでもある。クロモジがアロマセラピーに利用されるのも納得だ。
「家族も毎日飲んでいます。次女は1年でぜんそくが治り、家族全員、風邪やインフルエンザに感染していません」と大谷氏。クロモジ茶は、神話の国・島根のだいこく様からの贈り物かもしれない。
(健康ライター・宮岸洋明)
真似したい伝承療法