真似したい伝承療法

福井県のたくあんの煮たの

福井県のたくあんの煮たの
福井県のたくあんの煮たの(C)日刊ゲンダイ

“たくあんの煮たの”。福井県の人々は愛情を込めて、たくあんの煮物のことをこう呼ぶ。

 うま味が凝縮した干し大根を漬けたのが、たくあん。そのたくあんを、醤油やみりんなどで煮込んだものが、“たくあんの煮たの”だ。

「寒さが厳しい冬の福井でも、“たくあんの煮たの”を食べていたせいか、風邪を全然ひきませんでした」と懐かしげに話すのは、福井県出身で現在は東京在住の加藤智明さん(50)。

“たくあんの煮たの”はカリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいる。カリウムは余分なナトリウムを排出して血圧を整える。カルシウムは骨や歯の材料となったり、神経のいら立ちを抑えたりする。マグネシウムにも抗ストレス効果があるほか、心筋の収縮を正常化し、狭心症など心臓疾患の予防に役立つ。

 また、“たくあんの煮たの”には、ビタミンB1やB2も含まれている。いずれも糖質や脂質の代謝を助けて、疲労の蓄積などを防いでくれるのだ。

 こうした相乗効果により、健康状態が向上して、加藤さんのように風邪予防など体調面に好影響を与えるのかもしれない。

“たくあんの煮たの”は、自分でも作れるし、北陸地方などではスーパーや総菜店でも売られている。軟らかい食感、大根のうま味、醤油のほのかな香りが特徴で、ごはんのお供によし、酒のさかなとしてもよし。

 健康長寿の県として有名な福井だが、これを食べているおかげかも。

(健康ライター・宮岸洋明)

宮岸洋明

宮岸洋明

1965年、石川県生まれ。出版社勤務後、95年、健康ライターとして独立。以来20年、健康雑誌などで取材・執筆活動を開始。本連載では、世界的な長寿国である日本の伝承料理がテーマ。「健康長寿の秘訣は“食”にあり」をキーワードに、古くから伝えられてきた料理や食材を実食し、その栄養価、食味や調理法を紹介。筆者自身も、約1年前から数々の伝承料理を食べ約20キロのダイエットに成功。メタボを脱出し、健康診断もオールA。