“たくあんの煮たの”。福井県の人々は愛情を込めて、たくあんの煮物のことをこう呼ぶ。
うま味が凝縮した干し大根を漬けたのが、たくあん。そのたくあんを、醤油やみりんなどで煮込んだものが、“たくあんの煮たの”だ。
「寒さが厳しい冬の福井でも、“たくあんの煮たの”を食べていたせいか、風邪を全然ひきませんでした」と懐かしげに話すのは、福井県出身で現在は東京在住の加藤智明さん(50)。
“たくあんの煮たの”はカリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいる。カリウムは余分なナトリウムを排出して血圧を整える。カルシウムは骨や歯の材料となったり、神経のいら立ちを抑えたりする。マグネシウムにも抗ストレス効果があるほか、心筋の収縮を正常化し、狭心症など心臓疾患の予防に役立つ。
また、“たくあんの煮たの”には、ビタミンB1やB2も含まれている。いずれも糖質や脂質の代謝を助けて、疲労の蓄積などを防いでくれるのだ。
こうした相乗効果により、健康状態が向上して、加藤さんのように風邪予防など体調面に好影響を与えるのかもしれない。
“たくあんの煮たの”は、自分でも作れるし、北陸地方などではスーパーや総菜店でも売られている。軟らかい食感、大根のうま味、醤油のほのかな香りが特徴で、ごはんのお供によし、酒のさかなとしてもよし。
健康長寿の県として有名な福井だが、これを食べているおかげかも。
(健康ライター・宮岸洋明)
真似したい伝承療法